投機 三好徹(著) 集英社文庫 320円 昭和57年10月25日(初版発行)

「ヨタ記事をかましてくれないか」 支局への異動が内示され、くさっている経済部記者・益山は、証券界の一匹狼・加地から頼まれた。謝礼は一千万円。プロモーターは思わず胸のときめく美女。
益山の流したニセ情報で、株価は一挙に暴落した。一獲千金の夢は成功したかに思えたが・・・。己の持てる能力の全てを賭け兜町で戦う男を描く経済小説
(この作品は昭和53年6月、実業之日本社より刊行された)
 
目次
Ⅰ 欲望の街
Ⅱ 欲望の賭け
Ⅲ 盗まれた欲望
Ⅳ 欲望の死角
Ⅴ 残酷な欲望
Ⅵ 欲望の分けまえ
Ⅶ 終わりなき欲望
 
実に面白い。初版昭和57年というから今から37年前になる。今と違い市場にコンピューターが導入されてまだ日が浅い頃だっただろうか。
その頃、まだ私は証券会社に勤務し日々顧客に株の売買を勧めていた時代である。この頃はこの本の様に市場はある意味、風評というか仕手絡みの銘柄戦が多かったような気がする。故にこの本は面白いのである。今では到底考えられないことだろう。AIが主導しリスク回避で自動売買を繰り返す。板読みにしてもPCが支配し、寄付き1秒前にそれまでの気配を吹き消し、瞬時に何百回の注文を差し替える。これでは個人は勝てない。そして、証券会社の営業は手数料収入というノルマに否応なく顧客に売買を勧める。また一方で顧客の信用口座を借りて手張りをし、それが発覚して辞めて行ったセールスを何人もみた。
私の持論として、「株はギャンブル」と言い切る。それ故にメンタル、言い換えれば博才も必要となる。博才を持っているために、自分で相場を張ってみたくなる。そして会社にバレて辞めて行く。
さて本題の感想であるが、今読み返してみると実に時代背景を映しだしている。まだ携帯の無い時代である。情報の収集も個人で集めるのは難しく、短期売買においては株で儲けるにはどちらかと言うと玄人投資家であったと思う。博才が必要でまた資金力・緻密な推理等、あらゆる展開に読んでいて時代が変わってもグイグイ引き込まれてしまう。
 

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